アガサ・クリスティーと旅する読書会

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ポワロと一緒に! 妄想ナイル川クルーズ

〜旅する読書会 第1回「ナイルに死す」〜

 

コロナ禍でぷろぺら社員旅行は中止に…

その積立金を「自由に使って、何か考えてきて」と社長。

というわけで勝手に始めます、

シリーズ「アガサ・クリスティーと旅する読書会」‼︎ 

なんと今年2020年は、

アガサ・クリスティーの生誕130周年&デビュー100周年の年!

デイビッド・スーシェがポワロ役を演じる

ドラマ「名探偵ポワロ」が大好きで

幼い頃から何度もくり返し観てきたのですが、

小説ではほとんど読んだことがありませんでした…

読書が苦手な私にとって、刊行数の多いクリスティー全作品を読むのは

なかなか長い道のりとなりそうですが、

これを機にクリスティー小説をじっくり研究しようと思っています。

早川書房の赤い背表紙の文庫本が

我が家の本棚にビッシリ並ぶことを考えると、それだけでワクワク!


(↑ハヤカワ文庫のクリスティー文庫。現在も増加中)

 

まだまだ残暑が続く9月上旬、エルメスの「ナイルの庭」をふり、

軍資金を手に、いざ神保町の書店へ。

「旅する読書会」シリーズ第1回目は、『ナイルに死す』。

(この時点では新訳版が手に入らず、旧訳版を読みました。

新訳版もゲットして、読み比べもしなくては‼︎)

 

「ナイルに死す」は、ドラマ「名探偵ポワロ」の中でも

1930年代の豪華な旅行やリネットの華やかな衣装が印象深く、

特に心に残っている作品の一つです。




10月下旬には、ケネス・ブラナーがポワロ役を演じる

映画「ナイル殺人事件」も放映されますね。

話題となった前作「オリエント急行殺人事件」から3年。

楽しみにされている方も多いのでは?

 

それでは、小説の世界へ参りましょう。

主な登場人物は、

ベルギー人の私立探偵のエルキュール・ポワロ、

イギリス屈指の大富豪で美貌の女性リネット・リッジウェイ、

リネットの夫サイモン・ドイル、

リネットの友人でサイモンの元婚約者ジャクリーン・ド・ベルフォール。

 

そして、物語の舞台はナイル川クルーズ

…なのですが、ドラマ版とは異なり、これがなかなか船に乗りません!

 

第一部では、リネットとジャクリーンの再会と

ほかの登場人物がエジプトへ至る理由について触れています。

特に興味深いのは、小説では

「リネットが自分の屋敷をいかに大切にしているか」について

丁寧に描かれているという点。

ドラマ版では、リネットの婚約者は登場せず

彼女が婚約者との結婚に躊躇する様子が描かれていないのですが、

小説を読むと、屋敷の管理人となったサイモンを夫に選ぶという流れが

より自然と腑に落ちるような気がします。




第二部で、舞台はようやくエジプトに移ります。

アスワンのホテルでポワロに出会ったリネットは、

新婚旅行の間中、夫の元婚約者であるジャクリーンが

自分たちのあとをつけていることを相談、助けを求めるのですが、

ポワロは自身が休暇中であり、

その間、依頼を引き受けるつもりはないと断ってしまいます。

ここまではドラマ版と同様の流れなのですが、
小説では、ポワロはリネットとの会話に

『旧約聖書』の「サムエル記下」12章1節〜15節を持ち出し、

(※一匹の雌の仔羊の他に何も持っていない貧しい男と多くの牛や馬を持つ豊かな男のたとえ話。
豊かな男とは、なんでも持っていながら、ある男を剣にかけ、その妻を奪ったダビデ王のこと。)
リネット自身に非はなかったのかと指摘します。

 

ポワロが敬虔なクリスチャンであることは、

ほかの作品からも度々うかがい知ることができます。

たとえば、『オリエント急行の殺人』。

「法では裁くことのできない人物を罰した殺人は許されるのか」という問題に

ポワロが苦しむ姿が描かれています。

ちなみに、この事件の時も

被害者から脅迫を受けていることを相談されていたのですが、

ポワロはその態度を理由に依頼を断っていました。

あぁ、ポワロさん…またやってしまいましたね。

 

さて、ポワロがエジプトに到着したところで、

アスワンからワディ・ハルファまで

地図をたどりながら、ポワロと一緒に旅をしていきましょう。

 

アスワンはエジプト南部に位置する都市で

世界で最も日照率の高いヌビア地方の中心地です。



アスワンは、ナイル川沿いに約2kmにわたって延びる

メインロード(コルニーシュ通り)と

その東側に2本の広い通りがあるシンプルな街。

スークは歩行者天国になっており

香辛料屋や八百屋、おみやげ屋などが軒を連ねます。

 

街の喧騒を離れ、さらにナイル川上流に進むと現れるのは

ホテル「ソフィテル・レジェンド・オールド・カタラクト」。

ツタンカーメン王の墓を発見したハワード・カーターや

ウィンストン・チャーチルなど、名だたる要人が宿泊しました。

アガサ・クリスティーもその一人で、

ここでの滞在中に『ナイルに死す』を執筆したと言われています。


(ナイル川から見た「ソフィテル・レジェンド・オールド・カタラクト」。

小説にも、ポワロやリネットたちがナイル川クルーズ前に宿泊した

「カタラクト・ホテル」として登場します。)

 

アスワンの西、ナイル川の中洲には

ポワロがクルーズの前に立ち寄ったエレファンティネ島があります。

古代エジプト時代、この島は“エジプト”の最南端であり

ヌビアとの交易の拠点として重要な地でした。

ポワロも立ち寄った島の南部にあるアスワン博物館には

島内で発掘された遺物が集められ、

博物館の裏手には、クヌム神殿など古王国時代の遺跡が広がっています。



あ〜、いいなぁ…少しでも旅の気分を味わいたい!

ん?「味わう」?

よし!都内のエジプト料理屋さんに行ってみよう!

 

ぷろぺら本社の最寄りから小田急で2駅。

東北沢駅のすぐそばにある「デリショップうちむら」でランチ。

 

マスタードのような酸味を感じるチキンのショワルマや

フェタチーズのサラダに舌つづみ。

カラカラに乾いた砂漠で食べたら、元気になりそう!

テイクアウトもやっているようです。

 

舞台は、いよいよ往復7日間のナイル川クルーズへ移ります。

アスワンから電車で10分ほどのシェルラルを出港し、

めざすはスーダンとの国境付近の第二瀑布(セカンド・カタラクト)。

リネットたちは、ジャクリーンには内緒でカルナク号に乗船するのですが

またしても、目の前にジャクリーンが現れます。

途中で訪れたアブ・シンベル神殿では

遺跡見学中に大きな岩が落ちてくるなど

怪しい雰囲気はありながら、事件はなかなか起こりません。


(ラムセス2世が約3300年前に作らせたアブ・シンベル神殿。

神殿内部は、高さ10mのオシリス神の立像や

最古の講和条約とされるヒッタイトとの協定が記されたヒエログリフ、

周辺の民族との戦闘場面のレリーフで装飾されています。)

 

カルナク号に乗った一行は、目的地である第二瀑布に到着。

船が第二瀑布近くの町ワディ・ハルファに到着すると、

ポワロは、この地方の暴動の煽動者を追って乗船してきたという

イギリスの特務機関員のレイス大佐に遭遇します。

(彼らは一年前に起きた事件で知り合う。→『ひらいたトランプ』)

 

物語は250ページ(小説の約半分)を越えたころから急激に動き始めます。

ある朝、メイドがリネットを起こしにいくと

船室のベッドで頭から血を流した状態の彼女を発見します。

しかし、第一容疑者のジャクリーンには鉄壁のアリバイが…!

前日の夜、酒に酔ったジャクリーンは

目撃者がいる中でサイモンの足を撃ち抜き、

船に居合わせた看護師にモルヒネを打たれた上、

一晩中、付き添われて眠っていたのです。



調査を進めると、ジャクリーンの他にも、

リネットによって結婚を阻まれた男、

リネットの父によってビジネスが破滅に追い込まれた男の娘など

殺害の動機を持つ人物が複数乗船していることが発覚します。

リネットの事件に続く第二の殺人、

そしてポワロらが居合わせる中で第三の殺人も発生。

さらに、真珠のネックレスの盗難や

レイス大佐が追う事件との関係はあるのか…

ポワロはレイス大佐の協力を得ながら“灰色の脳細胞”を働かせ、

複数の事件と証言の嘘を次々に明らかにしていきます。

残すは、殺人事件の容疑者のみ。

 

ここで、ちょっと一息…

ラスト3章を前にディナーといきましょう。

今回は、渋谷スクランブルスクエア内の

地中海やアラビア料理のお店「カールヴァーン トウキョウ」へ。

 
エジプト産のコリアンダーと

飯能産の柚子ピールを使ったベルジャンホワイトと、

鶏もも肉とモロヘイヤのエジプト風タジンを注文。

きゃ〜、キレイな色!

タジンはトロトロのモロヘイヤのソースを

バスマティライスの上にかけていただきます。

スパイスで香り付けされたお肉は柔らかく、モロヘイヤのソースも優しいお味。

なんでもエジプトでは、モロヘイヤは宮廷でしか食べられない食材だったとか。

豪華なクルーズ船の乗客たちも同じような料理を食べていたのかしら…?

 

さて、カルナク号ではいよいよリネット殺害の犯人が明かされます。

※ネタバレが含まれます



一連の殺害はジャクリーンとサイモンによるもの

…ここまではドラマ版と一致するのですが、

小説を読んで、ジャクリーンへの印象がかなり変わりました。

ドラマ版では、ジャクリーンがあらかじめ殺害を計画した上で

リネットにサイモンを紹介したかのように描かれていたのに対し、

小説では、リストラに遭ったサイモンを助けるため

大金持ちの友人を紹介しただけ。

最初に殺害を思いついたのはサイモンだったのです。

バカな男に恋してしまったために

その計画を考えてあげたジャクリーン…うぅ、切ない。

 

カルナク号はシェルラルに到着。

船旅の終わりと同時に、ジャクリーンの手から

サイモンと自分に向けた2発の銃弾が発射され、物語は幕を下ろします。

ここで彼女の行動をわかっていながら見逃すところもポワロらしいですね。

 

事件が起こらない長い長い250ページも

緻密な人物描写とメインの事件を何重にも覆う謎で

読者を飽きさせないクリスティー。

伏線回収の美しさと事件の悲しい結末に完全に痺れました!

 

気軽に海外旅行ができない今、

皆さんも本を片手に豪華な船旅の世界を楽しんでみてはいかがでしょうか?


それでは、次回の「旅する読書会」でお会いしましょう。








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