本物のシードケーキって何⁉︎ ホテルのアフタヌーンティーでおばあちゃん探偵気分 〜旅する読書会 第2回「バートラム・ホテルにて」〜

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アガサ・クリスティー生誕130周年&デビュー100周年の

記念の年となる2020年

誰に言われたわけでもないですが、勝手にシリーズ化しちゃいます、

物語の世界を妄想旅行をする「アガサ・クリスティーと旅する読書会」。

第二弾は、普段はコーヒー派な人も

なぜだか無性に紅茶を飲みたくなるこの季節にぴったりな作品。

『バートラム・ホテルにて』




この小説、ストーリーはさておき

エドワード王朝時代にタイムスリップしたかのような

“完璧な”老舗ホテルを楽しめるという点が最高!なのです。

ジェラルディン・マクイーワンが主人公のミス・マープルを演じたドラマ版でも

どっしりと重い木材使っていそうな格式高いホテルの内装と

ラウンジでのお茶のシーンが印象的でした。

今回は、そんなホテルのアフタヌーン・ティーの世界を

小説とミス・マープルと共に旅していきましょう!




物語の舞台は、ロンドンのハイド・パーク近くに佇む「バートラム・ホテル」。

他のホテルが“新しいお客様”の気に入るよう、近代化されていく中、

昔から趣きが変わらず、目立たない中にも贅沢さを残したホテルです。

 

セント・メアリ・ミード村に住むミス・マープルは甥夫婦の手配で、

14歳の時に一度訪れたバートラム・ホテルに滞在することになります。

かつて彼女が滞在してから60年近く経過しているにもかかわらず、

変わらぬ姿を保つバートラムに違和感すら覚える中、

ホテルの周辺では、常連客で忘れん坊な牧師の失踪、多発する強奪事件、

そして、霧の夜に発砲事件が発生。

はたして、穏やかで品のあるホテルの裏で一体何が起きているのか?

ミス・マープルが鋭い洞察力を駆使して謎に迫ります。



ご想像ください。

玄関の大きなスウィングドアに通じるステップ、

出迎えるドアマンの胸には金モールと勲章の略章、

中に入れば、大きな中央ラウンジに石炭の暖炉が二つ、

暖炉の脇には磨き上げられた真鍮の石炭入れ、

全体は赤いビロードとフラシ天のような居心地のよさ。

 
ここまで揃えば、イギリス人なら当然こう言うでしょう。

「Tea?」



そうです、お茶のお時間です。

というわけで、小説の舞台となったホテルの

アフタヌーン・ティーを覗いてみましょう!

 

バートラム・ホテルのモデルとなったのが

ロンドン・メイフェアの中心に位置する「ブラウンズホテル」です。

1837年に創業し、王族や政治家、

ピューリッツァー賞やオスカー賞受賞者を迎えてきた5つ星ホテルであり、

発明者であるベルがロンドンで初めて電話をかけた場所という歴史があります。

(ブラウンズ・ホテルの公式インスタグラムより 2018年9月7日投稿)

https://www.instagram.com/p/Bna5wnjBjL3/

 

ここの応接室で提供されるアフタヌーンティーは

なんとヴィクトリア女王にも愛されたんだとか。

期待が高まります。

それではメニューを拝見。

紅茶、烏龍茶、緑茶、白茶、ハーブティーのほか、

季節のお茶も用意しているそうですが、

やはり、今回はブラウンズのハウスブレンドの紅茶を。

軽く、優雅なトップノートに、

適度な渋みと芳ばしさが続くフルボディのアッサムは

ミルクティーでいただきましょう。

さて、本の中に登場する食べ物はいつだって魅力的に見えますが、

『ぐりとぐら』のカステラに続き、全読者の興味をひくであろう料理が、

本書の「ほんもののシードケーキ」でしょう。

小説では、マープルと偶然再会した旧友のセリナ夫人が、

ホテルの給仕頭に「ほんもののシード・ケーキでしょうね?」と

用心深く尋ねる場面が丁寧に描かれています。

ケーキに使うシードと聞くと、ポピーシードを思い浮かべてしまいましたが、

イギリスの伝統的なレシピではキャラウェイシードが使われるそうです。



残念ながら、現在、ブラウンズで提供されているアフタヌーンティーには

このシードケーキは含まれていませんが、

キャラウェイシードパンを使ったセイボリーをいただくことができます。

(BROWN’S HOTELのホームページより

「ブラウンズホテル」応接室のサンプルメニュー↓

https://www.roccofortehotels.com/hotels-and-resorts/browns-hotel/restaurants-and-bars/the-drawing-room/menus/ )

 

マープルたちのように、ホテルのラウンジで贅沢な時間を過ごしたい!

秋に開業130周年を迎えた帝国ホテルにて、

同い年であるアガサ・クリスティーとコラボした

「アガサ・クリスティーの世界を味わう 英国アフタヌーンティー」

という企画が開催されていたので、

ホテルのラウンジでのアフタヌーンティーを体験してきました。


会場は「インペリアルラウンジ アクア」。

17階ということもあり、見晴らし良好です。

案内された席はラウンジの中でも奥の奥で、

重厚な材を使った大人な雰囲気の空間。

目の前には日比谷公園や皇居の緑が広がります。




本書に登場するキャラウェイ・シードケーキや燻製ニシンのほか、

『火曜クラブ』のトライフル、『動く指』のブレッドプディング、

クリスティーが好んで飲んでいたというラプサン・スーチョンなど

世界観を存分に堪能することができます。

甘いものばかりでなく、セイボリーも充実していて、

『ヒッコリー・ロードの殺人』より「クランペットとサーモンムース」も登場。

クランペットとは薄いパンケーキのような食べ物です。

こちらも美味しくいただきましたが、

個人的には、次回は『杉の棺』に出てくるサーモンペーストを食したい!


↑上段とスコーン


↑中段のセイボリー  


↑下段のセイボリー

実はこの小説、ミス・マープルは「目撃者」として事件に関わります。

ロンドン滞在中、ほとんどの時間をショッピングに費やすのですが、

ホテルや歩き疲れて立ち寄った喫茶店で

例のごとく、さまざまなことを見聞きしてしまうというわけです。

 

それでは、マープルと一緒にロンドンの街へ出かけましょう。

ロンドン滞在2日目にマープルがタクシーで向かった先は

「ロビンソン・アンド・クリーバー」。

こちらでは、高価で心地よいシーツと

赤い縁取りのあるガラス磨き用の布を購入しています。


古い新聞にアイリッシュリネンなどを扱う

“Robinson & Cleaver LTD.”という会社の広告が掲載されていました。

アイリッシュリネンは、リネンの中でも最高級の品質を誇り、

一流ホテルのシーツやタオルに使われているそうです。

マープルが買い物をしたのはここに違いありません。

広告によると、場所は156-170, Regent Street, London。

地下鉄のOxford Circus駅とPiccadilly Circus駅の

中間あたりに位置していたと考えられます。


(弧を描くRegent Streetは今も昔もリバティや老舗ブランドが連なるショッピング街)

 

ショッピングのついでにちょっと寄り道。

ロンドンらしい歴史的スポットを観光しましょう。

 

「ポワロ」シリーズのジャップ主任警部、

「シャーロック・ホームズ」シリーズのレストレード警部、

そして、本作で事件捜査にあたるデイビー主任警部らが所属するのが

そう、ここロンドン警視庁、通称「スコットランド・ヤード」!



イギリス旅行中、偶然この街路表示を見つけ、思わずパシャリ

…って、うわっっっ、監視カメラついてた!

虹彩認識されていませんように…

 

ちなみに、初代庁舎の裏口が昔の「スコットランド・ヤード

(スコットランド王の屋敷跡)」に向いていたため、

「スコットランド・ヤード」と親しまれてきましたが、

その後、移転を繰り返しています。

現在の庁舎は、テムズ川沿いのヴィクトリア エンバクトメントにあり、

「ニュー・スコットランド・ヤード」と呼ばれているそうです。

 

ショッピングに観光もしましたし、そろそろホテルに戻りましょう。

さて、記憶を頼りにロンドンの街を散策するマープルですが

バートラム・ホテル以外のほとんどが姿を変えてしまっていました。

1700年代からヴィクトリア朝にかけて親しまれた

シードケーキもまた、本書が書かれた1960年代には

ティールームで見かけることも珍しくなっていたといいます。

そんな「ほんもののシードケーキ」を家でも再現したい。

今回は北野佐久子さんの著書

『イギリスのお菓子とごちそう アガサ・クリスティーの食卓』のレシピで、

ケーキ作りなんぞ十数年ぶりの食い意地の張ったADが

キャラウェイを使った「ほんもののシードケーキ」なるものを作ってみました。



寒い冬は、『バートラム・ホテルにて』とミルクティー、お茶請けを用意して

英国老舗ホテルの雰囲気にどっぷり浸かってみてはいかがでしょうか?



と、1月頃にブログを載せるつもりが、うっかり忘れていました…

気がつけば、もう3月。東京でも桜がちらほらと…、しまったー。

今月はじめの三谷幸喜×野村萬斎『死との約束』(フジテレビ)、

ご覧になった方も多いのではないでしょうか?

 

そして、NHK BSプレミアムでは

3月6日(土)、13日(土)、20日(土)と3回にわたり

『無実はさいなむ』が放送されます!

今週末は、美味しい紅茶とケーキを用意して

イギリス気分をぜひ味わってみてくださいね。

 

それでは、次回の「旅する読書会」でお会いしましょう。

 

 

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